〇月✕日
前にもちょっと書いたとおり、私たちの事務所では、ここのところ、なぜか続けて個人再生の事件を受任しており、そのうち、すでに申立済みの事件については、ほどなく再生計画が認可される見込みとなっていますが、このたび、約半年ほどの準備を経て、新たにもう1件の申立を行いました。
前にもちょっと書きましたが、個人再生とは民事再生法の中の一制度で、個人事業者や給与生活者のための手続となります。
この制度ができたことによって、多重債務を抱えて相談に来られる方にとっての選択肢の幅が広がりました。
それまでは破産か任意整理(個々の債権者との任意の交渉による解決)という選択だったのですが、破産だと負債も消える代わり、不動産などの資産も失うことになるのが通常ですし、任意整理では負債そのものは減らないことも多く、十分な返済資力がない方にとっては経済的に厳しい選択となります。
その点、個人再生であれば、条件にもよりますが、負債を圧縮しつつ、不動産を残すことが可能になるわけで、築き上げた生活を維持したいと希望される方にとっての有力な選択肢となるわけです。
もちろん、個人再生が認められるための要件の検討が必要となりますし、どの程度メリットがあるかを把握するために清算価値チェックシートなるものを作成しなくてはなりませんから、実際の手続の利用については、一定の経験を持つ弁護士によるそれなりの検討と準備期間が必要となります。
それと、破産との違いでいうと、破産の場合は、「負債を支払うことができない」ということを手続きの中で明らかにしていかないといけませんが、個人再生の場合は、「そのままの負債を支払うことは無理だけれど、ルールに従って圧縮された負債なら返済できるという見通しがある」ということを裁判所に示していかなければなりません。
個人再生は、負債が増えて経済的には厳しい状況にあるけれど、不動産を何とか残していきたいと希望をお持ちの方にとっては、一筋の光明ともいえる制度ですが、その分、経済的なハードルは高くなります。
ところで、実際に私たちのところに相談に見える方は、必ずしも、最初から個人再生を念頭に置いておられるとは限りません。
いろいろお話を伺う中で、その方にとっての最も良い選択が個人再生手続であろうという結論になって行くというパターンもあるわけです。
また、今後の収入見通しが不確定であったりする場合もあり、準備を進めながら、個人再生の適用条件を満たしていくように努力をしていただかなければならないということもあります。
そういう意味からすると、個人再生は非常に動的な手続であるともいえるわけです。
個人再生手続が視野に入るような事例の場合、相談、依頼を受ける弁護士にとっては、選択肢が増えた分、判断に迷うケースも増えていますし、それぞれの手続きの内容や得失に関する説明に時間を取られる大変さもありますが、家族のために不動産を残してあげられるメリットのある個人再生が利用できれば、弁護士にとっても、良い仕事ができたという満足感もより大きなものがあります。
自宅不動産を手放したくないけれど、債務超過で困っている方がおられましたら、諦めずに、ぜひ個人再生も視野に入れた検討をされてみるとよいと思います。
なお、最初に書いた、近々計画が認可される見通しの事件については、手続中にちょっと珍しいけれど今後に役立ちそうな経験もしましたので、いずれまた取り上げてみたいと思います。