雇用に関する「2018年問題」をご存知でしょうか?
実は、最近扱っている事件で、労災給付支給中の有期雇用契約の労働者に対して、「次回は更新しない」という条件が提示されて、交渉の結果、撤回させることができたのですが、この事件で起きたことは、2018年に起きるであろうことの前触れではないかと思ったので、今回は、この問題を取り上げてみます。
雇用に関する「2018年問題」は、非正規で働く人たちにとっては、これからの生活の基盤を根底から覆しかねない非常に重大な問題といえます。
労働契約法が2012年に変えられ、2013年4月1日から継続して5年を超えて有期雇用契約が更新されている場合には、労働者側から申し出があれば期間の定めのない労働契約に転換しなくてはならないという制度になりました。
これだけを見ると、労働者にとって良いことのように思えますが、非正規雇用を「雇用の調整弁」、つまり、業績が悪くなったときに真っ先に切り捨てやすい存在と位置付け、正規雇用の率を上げたくないと考えるような使用者にすれば、この制度が発動する来年の4月になる前に、雇用契約を更新しない、つまり「雇止め」を行う、強い動機付けになることが非常に危惧されるわけです。
となると、そのタイミングは、5年の期限がやってくる来年の3月31日とは限らないことになります。
それよりもっと前の段階、たとえば、今年の9月30日から6か月の期間で契約更新の際に使用者側から、「次回は更新しない」という条項を付して合意を取り交わすというような働きかけがなされる可能性があると思います。
もちろん、有期雇用が、無期転換されるケースもかなり出て来るかもしれませんが、そうした場合には、制度の仕組みからして、「同一労働同一賃金の原則」との乖離が生じる可能性があるわけで、いずれにしても、こうした状況に置かれる弱い立場の人たちにとっては、目を離してはいけない時期が迫ってきているといえます。
十分にご留意ください。
ちなみに、雇用に関する2018年問題は、これだけではありません。
2015年の労働者派遣法の改訂によって、有期雇用の派遣社員が同一の組織単位で働ける期間は3年までということになったのですが、いよいよその最初の期限が2018年9月末にやってきます。
また、この2つの改訂が絡んでくる問題として、予想されることがあります。
つまり、派遣社員の立場からすると、同じ派遣先で3年以上働けないとなると、その前に、労働契約法の要件を満たす派遣社員は、派遣会社との関係で無期契約への転換を求めることになりますし(そうなれば3年を超えて同じ派遣先で働けることになります)、そういう事態になると、派遣会社とすれば、大量の無期契約社員を抱えることになるので、固定人件費が増えることを嫌う派遣会社が「雇止め」に動く可能性が高いのではないかともいわれています。
すでに派遣会社側はあれこれ対策を検討していると思いますので、派遣労働者の方々も、漫然とその日を迎えるのではなく、あらかじめ、状況をしっかり理解し、そうした動きに対応できるよう、学習しておくべき時期に来ていると思うのです(もちろん、私たち弁護士も)。