Part1に引き続いて、自己破産に関するニュース報道を見て感じたことについて述べようと思います。
Part1でも触れましたとおり、昨年の自己破産申立件数は前年に比べ6・4%増加し、7万件弱になっているというこの状況を分析してみると、金融機関の貸出金利が大きく下がっているにもかかわらず、破産者が増えつつある理由としては、日本における貧困化傾向が大きく影響しているというのが、破産事件を扱う中での私たち弁護士の実感であり、だとすれば、現状は、かつてのバブル崩壊後の長期不況の時よりも、もっと深刻なのではないかとも感じています。
そのことを強く示唆するニュース報道があります。
それは、借りた奨学金が払えなくて自己破産を申し立てる人が増えているという報道です。
親が保証人になっているケースも多いので、その場合は、親も含めて破産に追い込まれることになります。
そうした人の数が平成26年は過去最高になったというのです。
奨学金受給者全体に対する破産者の比率は非常に低いというデータやそうした観点からの反論もあるようですが、考えてみれば、奨学金制度では、返済の方法も比較的緩やかに設定されているわけですし、通常は親が保証人となっていますから、そうであるにもかかわらず、破産を選択せざるを得なくなる人が増えているということは、前途ある若者が社会に出てヨーイドンの段階で経済的に厳しい状況に追い込まれてしまっていることを意味するもので、非常に由々しき事態ではないかと感じます。
もちろん、奨学金をもらって学校を卒業しながら破産に至る事情は様々でしょうが、ここでも現在の労働者が置かれた状況の不安定さや、子供を養って来た親の経済事情が大きく影響しているに違いありません。
中でも、高校、大学等を卒業し、社会に出た若者にとって、収入の安定は生活基盤を形成する上では本来必須の要素であり、それが、たとえば、正規雇用でも低賃金であったり、ブラック企業で辞めざるを得なくなったり、非正規等の不安定雇用しか選択肢がなかったりとか、とにかく、奨学金を安定して返済し続けることを妨げるであろう労働現場の深刻な実態は、過労死事件等の報道によってすでに明らかになっているとおりです。
誤解を恐れずに言えば、これから社会に出て、意義のある仕事をし、また家族を養って行くために、どうしても大きな障害になるのであれば、前途ある若者が、破産という法的に認められた手続を積極的に活用して、重い荷物を下ろすことをためらう必要はないと思います。
もちろん、私たち弁護士の中にも、奨学金をもらうことで未来を切り開けた人は大勢います(当事務所のメンバーの中にも奨学金のお世話になった人はいます)ので、奨学金制度そのものの意義については、何ら疑うところはありません。
しかし、大企業が莫大な内部留保を抱えている一方で、一般庶民の貧困化が一段と深刻化している今の日本の現状を踏まえれば、高校、大学を出た若者が夢を描けないまま、低賃金の中で返済に追われるという状況は、かなりの部分において、個人の責任に帰するようなことではなく、社会全体の仕組みに大きな問題があるとしか思えません。
破産者の増加は、社会のひずみの結果であり、その原因が何であるかに目を向け、そこを変えて行かなければならないと強く思います。
そのような意味もあるのですが、破産についてはもう一つ別の報道を目にしたので、さらにPart3へと続きます。