とかく、法律用語というとお固いものが多いイメージですし、実際そのとおりなのですが、時々、何だかよくわからないような言葉や、普通に使うのとは全然ニュアンスが違っているような言葉が紛れ込んでいたりします。
「頑固な神経症状」というのもまさにそれにあたります。
しかも、この「頑固な神経症状」という言葉は、実務上よく使われるもので、弁護士の会話の中にもしばしば登場します。
というわけで、今日は「頑固な神経症状」にまつわるお話です。
頑固といってすぐに思い浮かぶことというと、「頑固おやじ」ではないかと思うのですが、その意味するところは、言い出したら人の言葉に耳を貸さない、偏屈なというあたりでしょうか。
一方、「頑固」という言葉は、交通事故や労災、医療事故などの後遺症の判断の中で、かなり重要な意味を持っています。
正確な表現としては、後遺症等級表の12級13号には「局部の頑固な神経症状」というものがありますが、はっきり「頑固」と書かれています。
つまり、れっきとした後遺症の認定の重要な要件の一つなのです。
しかも、同じ等級表の14級9号には、「局部の神経症状」という記載もありますから、神経症状が頑固かどうかによって、後遺症の等級が変わってくることになり、「頑固」か否かは後遺症認定の上で、時に決定的な意味を持ちます。
ちなみに、労働能力喪失率を対比しても、14級は5%、12級は14%ですから、3倍近い違いがありますし、判例などでは、神経症状が14級の場合、労働能力喪失期間もより短めに評価する傾向がありますので、その差はもっと大きいとも言えます。
「頑固」が法律的な用語として相応しいかどうかはともかく、言葉のイメージからは、「頑固」とは、一見、症状が強いとか、しつこいとかいったような意味に捉えられそうですが、全然違います。
ここにおける「頑固か否か」の判断は、神経症状を裏付ける他覚的所見があるかどうかによって決せられます。
つまり、レントゲンなどの客観的な検査によって確認できるかどうかということです。
頚椎ねんざに限らず、痛み、痺れ、知覚異常といった症状は、当事者の方にはつらいものであっても、第三者にはなかなか理解してもらえないものですし、さらに、それを客観的に証明しろといわれても、現実にはそうそう容易なことではありません。
最近、当事務所で扱っている交通事故や医療過誤事件でも、そうした神経症状の他覚的所見をどうやって得るかということで頭を悩ませる局面が増えています。
整形外科医の方にうかがうと、以前はレントゲンで診断していたけれど、今はCT,MRIで客観的に診断可能なケースも増えて来たそうです。
しかし、さらに悩ましいのは、レントゲン、CT、MRIといった画像所見によって証明できない場合も非常に多いということです。
そうなると、諦めて14級の後遺症認定を受け入れるか、別の方法による証明を考えるかということになります。
この別の証明方法として、しばしば用いるのが、たとえば、末梢神経に関する神経伝導速度検査、筋電図検査等の検査です。
電気刺激を与えたりしながらその波形を記録するなどしたもので客観的な証明となるものですので、もし、神経症状があるのに、なかなか認められないで困っておられる事故の被害者の方がおられたら、ぜひこれらの検査が可能かどうかを掛かっている病院の主治医に相談されてみてはいかがでしょうか。
どこでもやっているというわけではありませんが、明らかに痛みやしびれ、知覚異常といった症状が続いている方であれば、受けてみる価値はあると思います。
実際の事件でも、つてを頼って、その種の検査をわざわざ別の病院で受けに行ってもらい、「頑固」の証明ができたものがあります。
ぜひ、ご検討ください。