事務所トピックス
葵法律事務所

ここのところ、コロナウイルスのことばかりを記事に載せていましたので、久しぶりに医療事件のことを取り上げてみようと思います。
今回の記事は、当事務所における医療事件の受任の仕方に関するお話です。
タイトルにもあるとおり、当事務所の場合、医療事件については、複数の弁護士で受任することが基本となっています。
その理由についてご説明いたします。

前にもちょっと書いたことがありますが、弁護士の仕事は専門職でもあり、事件を扱う上で一定の知識やスキルが不可欠であり、それを身につけるために一定の実務経験を積むことが必要とされる職業であるといえます。
最近は、いきなり独立する弁護士や(最近の言葉では「即独」といいます)、給料をもらわないでスペースだけ使わせてもらう弁護士(最近の言葉では「ノキ弁」といいます)も多くなりましたが、勤務弁護士(いわゆる「イソ弁」です)で、給料をもらいながら経験を積むという昔ながらのやり方は、医療の世界における研修医と同じで、職業的なスキルを身に着けるためには合理的なものといえるわけです。
一般的な民事事件、刑事事件、家事事件に限らず、弁護士が扱う領域は幅広いですが、どのような領域においても実務的な経験値は必須です。
中には、そうした経験値をさほど積んでいなくてもきちんと事件処理ができる人もいるかもしれませんが、それにしても、事件処理のために様々な経験を積むことの有用性に変わりはありませんし、特に、医療などの専門性の高い領域では、一通りの実務処理経験を積んでおくことが非常に大切なのです。
最近でいえば、ほとんどの総合病院で普及している電子カルテに関するノウハウが、証拠保全、事案の検討、裁判の各場面で必要となりますが、このノウハウは、いくら頭で考えてもネットや文献を漁っても絶対に身につかないものです。
しかし、依頼者にとっては、弁護士に依頼をするという事態はそうそうあることではないので、弁護士が経験を積むための実験台になるわけには行きません。
そこで、特に医療事件の場合には、必ず、一定の経験を有する弁護士とセットで受任するようにしているわけです。
私たちも、医療事件をいっぱしに扱えるようになるまで、先輩、ベテランの弁護士と一緒に事件に取り組むことで、場面場面ごとのコツや事件処理のノウハウを身につけてきました。
そうすることで、ベテランの弁護士がこれまでに得て来た一定の経験、スキルを次代に引き継いで行くことができるわけです。

複数受任のメリットはほかにもあります。
医療事件は、作業量としても非常に多くなることがありますし、一人で取り組んでいると医学的な検討で行き詰ることも少なくありません。
作業を分担するという意味でも、行き詰りそうな局面を乗り切るためという意味でも、複数受任は極めて有効な手立てとなります。
実際、複数で引き受けていて非常にありがたいと感じるのは、専門医との面談の際です。
片方が質問をしている間、もう片方の弁護士がメモを取ったり、自分の方で次の質問を考えることができるので、二人がかりで医師と議論することで、より有用な意見をもらえる可能性が高くなるからです。

そういうわけで、当事務所では、医療事件を扱うにあたっては、事務所内の弁護士同士で組むか、事務所外の若手弁護士、一定の経験を持つ弁護士と組むかのいずれかのやり方で複数弁護士による受任が基本となっています。
ちなみに、当事務所の場合、複数受任となる場合でも、遠方に出掛ける場合の日当、交通費といった実費部分を除き、基本的な費用は変わりません。
ご参考にしていただければと思います。

2020年04月24日 > トピックス, 医療事件日記
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