〇月✖日
ある医療事件がいよいよ提訴直前となっているのですが、その事件の準備段階における最後の関門が、鑑定意見書の作成でした。
事件そのものは、相談する医師が異口同音に「ひどい」とおっしゃられるほどの、重大な死亡医療事故案件なのですが、輪をかけてひどいのが事故後の医療側の対応で、医学的に矛盾だらけの責任を否定する内容の書面を事故直後にご遺族に送り付けてくるという厚顔無恥ぶりだったのです。
医療側のそうした言い訳が裁判所で通用しないことを明確にしておくために、訴訟提起前の段階で、専門医の方に鑑定意見書をお願いしたという経緯がありました。
お願いした専門医の方は、経験も豊富で、またスタンスとしても極めて中立公正な方です、
実際、出来上がった鑑定意見書は、とても論理的であり、かつ医学的根拠が明確となっていて、非常に説得的な内容となっています。
ところで、鑑定意見書を訴訟提起前に準備するかどうかは、患者側代理人にとっては悩ましいところもあって、ケースバイケースの判断ということになります。
そもそも意見書をいただくまでもないと判断する場合はありますが、逆に、訴訟前の段階では、医療側の言い分がどうなるかはっきり見通せない場合もあり、そういう事件では、訴訟提起後に争点が明確になってから作成をお願いするほうがいいと判断することもあるわけです。
また、鑑定意見書の作成のためには数十万円程度の費用が掛かりますので、依頼者の経済的な事情も考慮してあげなければならないということもあります。
ただ、訴訟提起段階で、専門医の医学的知見に基づく説得力のある意見書があれば、早い段階で裁判官が事件の真相を理解してくれることもあり、早期決着が期待できるというメリットもあります。
今回の事件では、まさにそのような判断のもとに、訴訟提起前の鑑定意見書の作成に踏み切ったというわけです。
今回の事件では、これから訴状を完成させ、近々提訴の運びとなります。
この事件に関しましては、医療事故の背景に、事故を引き起こすような医療機関の発想、さらにいえば、現在の医療に潜む病巣のような問題があるのではないかというとらえ方をしておりますので、訴訟提起後においても、ご遺族の了解を得られれば、可能な範囲で裁判の経過についても報告していきたいと思っています。