全国のレオパレスのアパートにおいて、天井裏の「界壁」という防火壁が設けられていないケースが相当な件数、存在することが判明しました。
共同住宅においては、この「界壁」がないと、建物の一部で火災が起きた場合、天井裏から一気に燃え広がる危険が高いとのことで、建築基準法上も違法となるとの指摘があります。
レオパレス側は、現時点では、「下請けに対する検査体制が十分でなかったため生じたものであり、意図的なものではなかった」と説明しているようですが、同種事例が全国各地で多数存在するということになれば、単なる検査ミスというレベルではなく、組織ぐるみの手抜き工事が強く疑われることになるかもしれません。
実は、かなり以前のことですが、レオパレスとの交渉案件を扱ったことがあり、今回のニュースでその件のことを思い出しました。
その件は、アパートのオーナーがアパートを建て替えるにつき、レオパレスから提示された長期にわたる家賃保証という条件に魅力を感じ、ある程度まで話が進んだ段階で、決める前に慎重に検討したいということで相談を受け、契約条件を検討したのですが、最終的には、オーナーはレオパレスと契約をしませんでした。
この時に、最初乗り気だったオーナーが契約をしないと決めた主な理由は、大きく分けて二つありました。
一点目は、家賃保証の期間に関することで、10年間の保証までは確定していたのですが、以後の保証内容については曖昧なところがあり、オーナー側が負担することになるローンなどの支出とのバランスがどうなるかがはっきりしないということでした。
二点目は、建設工事に関することで、建築工事はレオパレスの指定する業者に依頼しなくてはならず、しかも、建築費が普通に建築業者に依頼する場合に比べてかなり高額だということでした。
建築費が高ければ、ローンも多額なものとなりますし、当然、月額返済額も大きくなりますので、家賃収入が将来減少した場合の収支の不均衡のリスクはより高まります。
結局、この二つの不安、疑問が払しょくされないということで、そのケースでは、オーナーはレオパレスと契約しないという決断をしたのです。
今回明らかになった問題においても、上記のケースと同様、レオパレスの指定する業者により建築工事が実施されているのだとすれば、どのような工事が実施されるかについてはブラックボックスになってしまう危険が高くなります。
上記のケースを検討した時に思ったのは、実際に部屋が埋まるかどうか確実でない状況で長期の家賃保証を約束するというのはそれなりに大きなリスクですから、レオパレス側が、建築工事費用を高めに設定し、自分のところで指定する業者に施工させるという手法を組み込むことで利益を確保しておこうという、そういうビジネス手法なのだろうなということでした。
もちろん、そうした手法がだめということではありませんが、そのような手法を取るのであれば、オーナー側のチェックが及びにくいわけですから、なおさら、工事の手抜きなどあってはならないはずです。
先日、この問題を扱った「ガイアの夜明け」というテレビ番組を見たのですが、界壁がない建物については補修工事を行わなければなりませんし、その工事費は非常に高額なものとなることは避けられないようです。
もちろん、住んでいる人にとっても、防火用の界壁があるか否かは命に関わりかねないわけですから、補修工事については、一刻の猶予も許されません。
ただ、実際の工事となると、居住者にいったんは立ち退いてもらわなければならず、また、この問題の影響で新規入居の見込みも厳しくなることが想定されます。
同番組でもそのような指摘がありました。
そう考えていくと、今回の手抜き工事の問題は、オーナーにとっても、今後の展開によっては死活問題になりかねません。
そうである以上、オーナーや居住者が不利益を受けないよう、レオパレス側が誠意をもって対応しなくてはならない重大な責任を負っていることはいうまでもないでしょう。
たまたま、最近、不動産関係の人と話した時に、今の日本は、金利が低く、老後の所得保証、医療や福祉のインフラが貧弱で、多くの人が老後に不安を抱えていることもあって、アパートのような収益物件に関心を持つ人が増えているという状況について懸念があるという話になりました。
というのは、すでに少子高齢化社会となっている日本では、近い将来の人口減少が見込まれているわけで、そのような状況で、多額のローンを背負いながらアパートを建てて賃料収入を得ようとする手法は、資産運用として必ずしも有効とは限らないし、下手をすると営々と築き上げた資産を失うことにもなりかねないからです。
アパートに限らず、資産運用について働きかけて来る業者や金融機関の説明を鵜呑みにするのではなく、弁護士や税理士などに相談するなどして、くれぐれも慎重に検討されるべきです。
このお話は、同じく、「ガイアの夜明け」で取り上げられた「かぼちゃの馬車」のお話にもつながるところがありますので、そちらの方もいずれ取り上げたいと考えています。