「半沢直樹」が終わりました。
個人的に堺雅人の大ファンということもあり、また前のシリーズが非常に面白かったので、今回は逃さずリアルタイム視聴しました。
一つのドラマすべてをリアルタイム視聴したのは生まれて初めてのことかもしれません。
始まる前は、前の作品の出来があまりに素晴らしかったこともあり、それを超えた作品に仕上げるのは大変なのではないかとも思っていたのですが、予想をはるかに上回る面白さで、ご多分に漏れず、現在は「半沢ロス」状態となっています。
面白かった要因は、原作が持つストーリーの重厚さと脚本の巧みさによるエンターテインメント性の高さ、そして個々の俳優の演技の素晴らしさにあるのだと思いますが、もう一つ心を惹かれたのは、節目節目で語られる「言葉の力」です。
主として、その言葉は堺雅人の口から発せられるもので、彼の演技力によってその言葉がより強く心を打つとも思うのですが、とにかく、この作品はきっと観る人の心に何かを残すに違いないと思えるのです。
というわけで、「半沢直樹」の中から、いくつか心に沁みた言葉を取り上げてみたいと思います。
まず、その一つ目は、最終回で、半沢直樹の妻である花が半沢直樹を励ます時のセリフです。
追い詰められ、いよいよ最後の行動に出る前の夫婦の会話の中で、花が、これまで懸命に闘ってきた半沢を励ますために発したものですが、その途中からを取り上げます。
「何があったか知らないけど、もう頑張らなくていいよ」「直樹は今まで十分すぎるくらい頑張った」「いつもいろんなものを抱えてボロボロになるまで戦って、必死で尽くした銀行にそれでもお前なんかいらないなんて言われるならこっちから辞表たたきつけてやりなさいよ。サラリーマンの最後の武器でしょ」「今までよく頑張ったね。ありがとう、お疲れ様」「ていう気持ちでいればとりあえず少し気が楽になるでしょ」「仕事なんてなくなったって、生きてればなんとかなる」「生きていれば、なんとかね」
この言葉に心を打たれた人は多かったと思います。
何といっても、この放映日の朝、女優の竹内結子さんが亡くなり、どうやら自殺ではないかとのニュースが流れたばかりでした。
お子さんを二人抱えながら、また女優として立派に成功したと見られている中で、なぜ彼女は死を選んでしまったのか、多くの人はショックを受けたと思います。
竹内結子さんに限らず、ここのところ、著名な俳優の方たちが続けて自殺しているということもありますが、おそらくこの花のセリフは、今の国民に向けられた励ましのメッセージだったに違いありません。
今回のこのドラマは、まさにコロナ禍の真っ最中にいろいろな制約を受けながら制作されたわけで、2~3か月のクールの作品でありながら製作期間は7ヶ月にも及んでいます。
このドラマではずっと撮影と並行してドラマの脚本が仕上げられていたとの情報もありますが、制作者たちは、コロナの影響が長引き、より深刻化して行く状況下で撮影と同時進行で作り上げて行かれたこのドラマの脚本に、コロナの影響で経済的に苦境に追い込まれ、苦しむ国民への想い、願いを籠めたのだと思うのです。
竹内結子さんについていえば、もし、彼女がもう一日思いとどまって「半沢直樹」を観て、花さんの言葉を聞いていれば、自殺せず、生きることを選んでくれていたのではないかという気すらしますが、花さんが発する言葉に勇気づけられ、また竹内結子さんのことと重ね合わせて涙した視聴者は多いと思います。
それほど、花さんの「生きてさえいればなんとかなる」という、一見何気ない言葉には力と深さが感じられるのです。
実は、このドラマの放映の後、友人と会っている時にも同じような話が出ました。
その時にこんな話をしています。
「実感としては、生きている内の99%の時間は苦しいけれど、残りの1%で報われると、『ああ、生きていてよかった』と思う。だから苦しい時間の方が圧倒的に長いかもしれないけれど、あきらめさえしなければその先には労苦が報われる時がきっとやって来る、そう信じればなんとかやっていける」
花さんの言葉の意味とは少しニュアンスは違うかもしれませんが、生きることの苦しさの向こう側にきっと明るい未来があると信じたいし、そのためには、もし今の場所がだめなら、命を絶つのではなく、逃げ出せばいいと思うのです。
花の言葉はちょっと長いセリフなので流行語大賞になることはないかもしれませんが、観た人に踏みとどまって前を向くきっかけを与える名言だと思います。
まだ取り上げたい言葉がありますので、続きはまた書きます。