事務所トピックス
葵法律事務所

狛江市で起きた強盗殺人事件から、その背後にある組織的でおぞましいまでに悪質な犯罪集団の存在と手口が徐々に明らかになりつつあります。
いずれまたきちんと取り上げてみたいと思いますが、この事件は、私たちに、目をそらしてはならない、現在の日本の様々な矛盾や問題点を映し出しています。
たとえば、特殊詐欺のターゲットになっているような一人暮らしの高齢者が、今度はより安直で悪質な強盗のターゲットになっていると思われることや、若者がインターネットでの高額闇バイトにあまりに安易に手を染めてしまっていること、犯行がスマホによる海外からの遠隔操作によって実行されているらしきこと等ですが、根幹には、コツコツ真面目に働いても報われそうにないほどに貧富の差が拡大し、その一方で、やったもん勝ちのような発想を持つことを恥とも思わないような人間が、マスメディアや政治の世界で堂々と闊歩してしまっていることがあるように思います。
徹底した摘発はもちろん、安易に犯行に手を染めた人間に対して重い刑罰が科せられるべきはもちろんですが、この種の犯罪をなくすためには、今の日本の政治、経済、社会のあり方を変え、額に汗して働いた人がちゃんと報われ、若者が健全に将来を夢見ることができるような国に変えていかなくてはならないと、心の底からそう思います。

ただ、広域強盗のみならず、リフォームやシロアリの詐欺や投資詐欺、原野商法なども含め、独居あるいは一人の時間帯が多い高齢者が、ターゲットになっているという現実がある以上、被害を防ぐための手立てが喫緊に必要です。
自宅のセキュリティ強化や、地域の連携や警察の見回りなども必要ですが、今回の広域強盗の場合、宅配便業者を装うという手口も用いているようで、宅配ボックスのあるようなマンションでもない限り荷物の引き取りのためにドアを開けざるを得なくなるでしょうから、特に独居の高齢者にとっては、非常に恐るべき事態だといえます。

ではどうすればよいでしょうか。
それでもって絶対大丈夫ということではありませんが、法定後見もしくは任意後見を利用するというのは考慮に値すると思います。
法定後見(判断能力のレベルに応じて保佐、補助もあります)は、ご本人に十分な判断能力がない場合に、裁判所に成年後見人を選任してもらい、財産管理を本人に代わってやってもらい、療養監護についても関与してもらうという制度です。
したがって、判断能力の衰えがある方についてしか利用できませんが、認知能力の衰えがある方こそ、この種の事件の被害に遭いやすいわけですから、親族や周囲の方が心配だと思われたら、早急に利用を考えてみるべきと思います。
また、現時点で認知能力の衰えがない場合には法定後見は使えませんが、その場合には任意後見契約を締結しておくという方法があります。
任意後見契約自体は、将来、要後見状態になった時に備えて信頼できる人を指定しておくものですが、公正証書を作成する必要がある一方、その際に財産管理に関する委任契約をあわせて締結することが可能です。
つまり、法定後見であれ、任意後見であれ、財産管理を成年後見人(もしくは財産管理の受任者)に委ねることができるので、自宅にはまとまった多額の財産を置かないようにでき、その意味で安心といえます。
もっとも、特殊詐欺にしても、広域強盗にしても、必ずしも自宅に財産があることを確認して狙ってくるとは限りませんが、親切なふりを装って家に入り込み、財産があるかどうかを探るという手口のほか、金融に関する個人情報を不法に入手して犯行に及んでいるのではないかともいわれており、法定後見や任意後見でもって、第三者がきちんと財産管理を行っている場合にはターゲットになりにくいのではないかとも思われます。

老いによる衰えは誰にでもやってくることですし、老後のための虎の子の財産を狙う犯罪が後を絶たず、さらには命の危険までが現実のものになっている原状に鑑みれば、最悪の被害に遭うことを防ぐ手立てとして一定の有効性があるであろう法定後見もしくは任意後見の利用については、転ばぬ先の杖をいう意味で十分に検討してみる価値があると思います。
ぜひ、お近くの法律事務所や司法書士事務所、法律相談センターなどに足を運んでみられるようお勧めいたします。

2023年02月12日 > トピックス, 日々雑感
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