Part1に続いて、いよいよ、如何にしてカープを強くするか、まずは、攻撃陣の問題から取り上げます。
機動力の問題など個別に検討すべき点はありますが、ここのところのカープに決定的に欠けていたのは、チーム内の公平で健全な競争です(それは投手陣についてもいえることではありますが)。
実績のあるベテランが結果を残せないでいるのに、そのままベテランを使い続け、スタメン起用をしなくなってもそのまま一軍ベンチにいさせ続けるという、政治の世界も含め、今の日本を停滞させている「忖度」が、カープの中でもあるのではと疑いたくなるような采配、選手起用が、ここのところずっと続いていました。
いかに三連覇に貢献した選手であっても、結果が著しく悪ければ二軍に落とし、若手にチャンスを与えることがチームの活性化につながるのに、それが十分なされていたとはいえない状況でした。
古い話で恐縮ですが、1975年に初優勝したカープのその後をちょっと振り返ります。
初優勝した後、カープはなかなか優勝できず、順位もじわじわ転落して行きます。
その中で、古葉監督は、徐々に戦力を立て直して二連覇を成し遂げるのですが、高橋慶彦や山崎隆造、正田耕三といったスイッチヒッターを辛抱強く起用し、機動力野球と200発打線の融合の完成形ともいえる、見ていてわくわくするチームを作り上げ、赤ヘルカープの第一期黄金時代を築き上げました。
今も破られていない連続試合安打のプロ野球記録を持つ高橋慶彦の真骨頂は、なんといっても失敗を恐れず盗塁に果敢にチャレンジし続ける姿勢で、多い時は年間70個以上の盗塁を記録していましたが、山崎も正田も走れるスイッチヒッターで、相手チームにとっては脅威でしたし、正田は二年連続首位打者にも輝いています。
しかし、ローマは一日にして成らずで、可能性のある選手については、目を瞑って起用し続ける辛抱強さが求められるのですが、古葉監督の起用法はまさにそんな感じでした。
シビアに言えば、ベテランと若手が同じ程度、あるいは若干若手のほうが力量が劣っても、伸びる可能性に賭けて機会を与えることが必要であり、それをやってこそ「育成」といえるわけです。
資金力が乏しい球団は、どこかの球団みたいに選手を取っ換え引っ換えしたりできないのですから、若手に機会を与え、結果が出ず、批判を浴びても粘り強く使い続ける根気を持つことが戦術として必須なのです。
もちろん、ベテランにもチャンスは与えるべきですが、伸びしろは少なく、一方で「慣れ」という優位さがあるわけですから、それを活かせず、結果が出せないのであれば、若手に居場所を譲らなくてはならない立場にあります。
もっとも、個々の選手からすれば、結果が出なくても、自ら二軍に落としてくれというはずはありません。
そこをシビアに判断し、決断を下すのが首脳陣の仕事なのです。
三連覇を共に経験したベテランに毅然と接するということは、新井さんにとってはしんどいところかもしれませんが、指揮官としての能力、姿勢が問われる試金石になると思います。
もう一つ、二軍から上げた選手には、その都度、何度かチャンスを与えるということを方針として確立し、徹底すべきです。
去年までのカープの選手起用を見ていると、一軍に上がった選手が一度も起用されないまま二軍に落とされるということがしばしばありましたし、試合で結果を出したのに、その後起用されず、そのうち二軍に落とされるということもありました。
もちろん、現場で練習などを見ていて使えないと判断されることもあるのかもしれませんが、その選手が腐ってしまうだけでなく、他の選手の士気にも大きく影響します。
やはり、選手にとっては、がんばったら一軍に上げてもらえる、一軍に上げてもらえたら何度かはチャンスを与えてもらえる、結果を残せば続けて起用してもらえるということが何より励みになるわけです。
チームを如何にして活性化させるかについては、ほかにもいろいろな手法が考えられますが、ベテラン、若手を問わず、できるだけ平等に競争の機会を与えることが、カープのような資金力の乏しい球団にとっては重要な戦略といえます。
その中から新しい戦力が出てきてチーム内競争が激しくなることこそがチームを強くするための最良のレシピなのです。
もう一つ、攻撃陣の問題点として挙げられるのは、得点力の低さです。
打率が高いのに、得点が少ないのは、長打力不足ということもありますが、それは一面であり、本質的な問題点はほかにあります。
ここのところの得点力の低さは、厳しい言い方をすると野球の質の低さによるものです。
野球というスポーツは、投手と打者の一対一の戦いという部分が大きいのですが、それに関して言えば、普通にやれば70%以上投手が勝ちます。
ましてやエース級を相手にすれば、あるいは、去年の日本シリーズでも明らかなとおり、勝負所で160キロ近いスピードの直球と落差の激しいフォークを投げ分ける投手が出てきたら、90%以上投手の勝ちとなります。
そこで勝つために知恵を絞り、戦術を駆使するのが首脳陣の仕事なのですが、ここのところのカープは、残念ながらその戦術を練り上げて実践するということができていませんでした。
その結果、相手チームのバッテリーは、概ね一対一の打者との戦いに専念でき、優位に立っていました。
よくいやらしい野球といいますが、古葉監督時代の強い時のカープは、何をやってくるかわからないと相手にそう思わせる野球でした。
それは、たとえば、ヒットエンドランや盗塁だけではなく、バスター、ドラッグバント、あるいは走る構えを見せるだけでも違います。
もちろん、徹底した右打ちもそうだし、ただ打つだけのときは徹底して右打ちを試みながら、ヒットエンドランになったら、三遊間を狙うといった戦法もあります。
要は、打者が打席に立った時の、攻める側の引き出しの多さが重要なのです(引き出しが多ければ、相手が警戒して四球を得ることもできますし、球数を多く投げさせれば打ちあぐんでいるエース級の投手をマウンドから引きずり下ろすこともできます)。
戦術として大切なことは、個々の選手の走塁の技術や走る意識づけだけではなく、それを戦術に如何にして組み込むかということです。
参謀となる藤井ヘッドコーチや石原コーチは捕手出身ですから、捕手の目から見て、どう攻められたら嫌かという視点でもってそれを攻撃に関する戦術に生かして練り上げ、新井型攻撃野球を構築していってもらいたいと思います。
失敗を恐れず、アグレッシブで、相手から見て何をやってくるかわからない、そんなワクワクドキドキな新生赤ヘル野球を期待しています。
もちろん、ホームランは野球の華ですし、新井さんなので、そこも期待したいところですが、それは選手の成長にかかるので、ファンとしても、一足飛びではなく、長い目で見ることが肝要と思います。
ほかにも打順の組み方や、會澤あたりを一塁、三塁あたりで起用するなどの積極的なコンバートとか試みるべきことはいくらでもありますが、ひとまず、攻撃陣についてはこれで締めます。
次は守備の問題を取り上げますが、長くなったのでPart3に続きます。