事務所トピックス
弁護士 折本 和司

2024年は、元旦から能登半島地震、航空機事故と波乱の幕開けとなりました。

地震については、かなりの方が亡くなられており、珠洲市あたりでは家屋の大部分が倒壊するなど、大変な被害となっており、心が痛みます。

被災された方々には心からお見舞い申し上げます。

まだまだ寒い時期が続きますし、本当に大変だとは思いますが、なんとか乗り切っていただきたいと思います。

今回の地震が起きてからいろいろな情報に触れながら考えたこと、思ったことなんかをつらつらと書き綴ってみようと思います。

長くなりますが、興味のある方はお読みください。

 

はじめに、ちょっと唐突ですが、火山のない和歌山に温泉が多い理由をご存じですか?

実は、去年、私は和歌山に2回も行ったのですが、その際にそんな疑問に触れました。

和歌山に2回行くことになったきっかけは、那智勝浦の色川という集落に住んでいる中学時代からの親友のお母さんが亡くなられたことでした。

遠く和歌山で亡くなられたお母さんのことを彼と一緒に偲び、見送ってあげたいと思い立って、久しぶりに和歌山に足を運びました。

帰ってから、今度はその話を横浜の弁護士仲間としていたら、その中になんと祖父が色川に住んでいたという友人がいて、そこから再度の和歌山行きが実現しました。

和歌山で楽しかったことはいろいろあったのですが、それはまたの機会ということで、ここから温泉の話をします。

 

和歌山にはあちこちに自噴の温泉があります。

旅行の際に泊ったのが川湯温泉というところで、その名のとおり、河川敷に湧く温泉に水着で浸かるのですが、移動中には「つぼ湯」で有名な湯峰温泉にも立ち寄りました。

湯峰温泉の場合、そばを流れる細い川にも硫黄の強烈なにおいが漂っていました。

ほかにも和歌山といえば、南紀白浜温泉あたりが有名ですが、旅の途中で、和歌山県には実はひとつも火山がないという話になりました。

なのに、なぜ温泉がこんなにたくさんあるのか、不思議に思ってちょっと調べたのです。

 

調べていくうちに知ったことですが、和歌山は今でこそ火山がないものの、1400万年前には阿蘇山よりもはるかに巨大なカルデラの火山があったのだそうです。

そのため、紀伊半島は火成岩で形成されており、太平洋に大きく出っ張って黒潮に面していながら、潮流に削られないであの半島の形を保っていられるのは、固い火成岩のおかげであり、那智の滝のむき出しの岩肌も火成岩だとのことでした。

それはともかく、ここからが本題です。

和歌山に温泉が湧き出る理由というか、メカニズムですが、それはユーラシアプレートの下にフィリピンプレートが潜り込んでいく中で、海水が引き込まれるのだそうで、引き込まれた海水が地下で熱せられて、豊富な地下水がその影響で温められて温泉となって湧き出るのだそうです。

実際、南紀白浜温泉の湯温は100度にもなるそうですが、私たちの足元の地球の奥深くには、人智などはるかに及ばない苛烈な自然が潜んでいるんだとそんなことを考えたりしました。

 

調べ終わった時には、「ふーん、なるほど」という感じで受け止めていたのですが、年が明けて能登半島で震度7の地震が起きた際に目にした地震のメカニズムに関するニュースを見て、「あれっ?もしかして」と思うようになり、そこから少し情報収集に努めました。

なぜかというと、能登半島の地震も、おおもとに遡れば、フィリピンプレートの潜り込みによって起きているということだったので、もしかしたら和歌山の温泉の話と共通する点があるのではないかと思ったからです。

聞きかじりの知識ですが、どうやらビンゴのようです。

能登半島ではここ数年群発地震が続いていて、一昨年の5月にもかなりの規模の地震が起きているのですが、この群発地震のメカニズムを研究している京大や金沢大等の学者が、一昨年の地震の際、以下のようなことをおっしゃっていたのです。

そのうちの金沢大学の平松教授の発言ですが、「この群発地震は、フィリピンプレートの潜り込みとそれに伴う大量の『流体』の影響で起きており、この流体の影響が海底の断層に及べば、さらに大きな地震や津波が起きる危険もある」と明言されていました。

そして、この正月にまさにその指摘通りの事態が起きてしまったわけです。

最近読んだ、東京工大の中島教授という方の研究成果の記事でも、「流体には浮力があり、この流体が地下断層に及べば、液体の影響で断層が滑りやすくなって、地震を誘発する」と記載されていました。

 

私は、今回の地震のニュースで初めて「流体」という言葉を知りましたが、プレートが潜り込んで、海水が引き込まれていくということであれば、火山帯がない場所に温泉が出るのとまったく同じメカニズムということになります(実際、能登半島の地下の流体は非常な高温のようです)。

実は、和歌山の温泉の情報に接したときには、このプレートの潜り込みというのは、紀伊半島の下くらいまでだと勝手に思い込んでいたのですが、そんな規模ではなく、プレートは日本列島を超えて、日本海側にまで潜り込んでいたというわけです。

この潜り込んでいるプレート(今回は位置的にフィリピンプレートなのかもしれませんが、伊豆半島から東側は太平洋プレートが潜り込んでいますから、同じことです)を舌にたとえると、日本列島は常にこの凶暴な震える舌の上に乗っかっていることなわけで、つくづく日本は地震に見舞われるリスクが非常に高い地理的な条件の国なのだとあらためて痛感させられます。

となると、日本列島では、いつどこで巨大地震が起きるかは本当に紙一重といえますし、この島国で暮らす私たちの日常や経済的繁栄なんて自然の驚異の前では砂上の楼閣にすぎないのかもしれません。

この話はさらに続きますが、長くなるので続きはPart2で書きたいと思います。

 

2024年02月12日 > トピックス, 日々雑感
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