事務所トピックス

事件日記~離婚と公正証書

葵法律事務所

〇月✕日

ある離婚事件で、話し合いの結果離婚条件が定まり、公正証書を作成しました。

依頼者は生まれて間もない子供を抱えた女性で、夫の暴力などの問題もあり、別居に踏み切って相談に見えられた方でした。

主な争点は、慰謝料、親権、養育費、財産分与といったあたりでしたが、この内、慰謝料については、暴力行為自体の証拠自体はあるものの、慰謝料に固執すると、感情的なもつれから、事件が調停、訴訟へと移行し、長期化が避けられそうもなかったので、依頼者の早期解決の要望を踏まえ、財産分与の中でプラスアルファを得られれば良いということで、慰謝料請求には強く拘らないということになりました。

このあたりの判断については、個別の事情や感情的なこともあって、ケースバイケースで判断するしかありませんが、この事件では、依頼者自身、傷つけあうことは長い目で見て得策ではないと判断されたというもので、結論としては賢明だったと思います。

その代わりというとなんですが、養育費の支払いについて、一般的なケースとは異なり、早期に前倒しでの支払いを得られるという条件を獲得することが出来ました。

本来、養育費とは、毎月毎月発生するものなので、早期の一括という条件を実現することは理屈的にも難しいところがあります。

しかし、子供を抱える女性にとっては、特に子供が幼い時期は働きに出ることも難しいわけですから、そうした時期に前倒しで養育費をもらえることのメリットは非常に大きいといえます(実際、子供がある程度の年齢になれば、働き始めるという選択もできます)。

そうした条件を盛り込んだ合意書を作成の上、その事件ではさらに公正証書を作成しました。

調停、訴訟による解決と違い、単なる合意書では、いざという時の約束違反に即座に対応できないということもあって、離婚の際に、執行力のある公正証書を作成するという選択をする場合があります。

相手を信用するかどうかの問題ではなく、経済的な面でハンディのある母親側の利益を守ってあげるための有効な手立てといえるからです。

信頼できる公証人とのやりとりを重ねて公正証書を作成し、事件は終結しました。

 

離婚は、夫婦双方にとって人生の再出発です。

この事件では、最初はかなり感情的な対立があったものの、交渉過程ではお互いを攻撃し合うというようなやりとりは避けられたし、最終段階では直接会うこともできて早期に双方が納得できる解決ができたように思いますし、離婚後は、双方とも前向きに人生を歩んでくれるに違いないという手応えがありました。

人生に幸あれ!ですね。

2016年11月13日 > トピックス, 事件日記

事件日記~甘く考えてはいけない!「自転車の交通事故」

葵法律事務所

〇月✕日

自転車の交通事故で依頼者の方に後遺症診断が出ることになりました。

事件は、ある高齢の女性が自宅の近くの道を歩いていた時に、前方から走って来た自転車の男性がわき見をしていて、いきなりその女性に衝突したというものです。女性はそのまま病院に運び込まれましたが、右足骨折の大けがでした。その後、1ヶ月余り入院し、さらに2年以上もの通院を重ねたものの、結局、杖なしでは歩行できないという重大な後遺症が残ることになりました。

ただ、不幸中の幸いだったのは、加害者の男性が自転車の損害賠償保険に入っていたことでした。

ニュースなどで取り上げられてご存知の方もおられると思いますが、少し前には自転車の事故により数千万円以上の高額賠償が命じられたという判決も出ています。

今回の被害者の場合、損害保険でそういった損害はカバーされることになりますが、もし損害保険に入っていなければどうなったでしょうか?

加害者の経済状況によっては、重大な後遺症を負ったにもかかわらず、被害者は満足な賠償を受けられないことになりますし、逆に、加害者にとっても高額な損害賠償の債務を負うことになり、そのために財産を失い、あるいは一生かけて弁償を続けなくてはならなくなります。被害者、加害者双方にとって、人生を大きく狂わせかねないわけで、ちょっとした油断がもたらすかもしれない重大な結果を想像すると空恐ろしささえ感じます。

しかし、現状では自転車のために損害保険契約に加入している人は非常に少ないのではないでしょうか。

大人から子供まで、ママチャリからスポーツ自転車まで、自転車はあまりに身近な乗り物であるだけに、事故に遭遇する危険もまた非常に高いといえます。

私たちは保険会社の回し者ではないけれど、こうした事故を目の当たりにすると、やはり、ご自身あるいは家族が自転車に乗られるのであれば、損害保険契約への加入を真剣に考えた方がいいと思うわけです。

 

ただ、もう一つ思うことは、自転車は身近で手軽でエコな乗り物なわけですが、その一方で、日本では、車が優先されていて、自転車が安心して走行できるような環境が必ずしも整備されていないように感じますし、自転車に関するルールも非常に曖昧だと感じます。

そうした曖昧な位置付けでありながら、いったん事故が起きてしまうと、重い責任を負わされるわけで、正直、自転車の事故については、起きた状況によっては、ルールや環境の整備をきちんとやっていない国や自治体こそが責任を負うべきなのではないかと考えたりします。自転車は小学生だって普通に乗るわけですからなおさらです。

またそうなると、やはり早い段階から、自転車の交通ルールについて学ぶ機会であるとか、実地での研修のようなものも必要だと思います。

いかがでしょうか。

 

2016年11月12日 > トピックス, 事件日記

医療事件日記~協力医と一緒に冠動脈カテーテルの映像を検証する

葵法律事務所

〇月✕日

医療事件の真相解明に協力してくださる協力医の方との面談に出かけました。

今回は循環器内科の専門医で、これまでも散々お世話になって来た方です。

通常であれば病院におうかがいするのですが、今回は日程的なこともあったので、ちょっと無理を申し上げたところ、休日にお時間を作っていただけることとなり、ご厚意に甘えてご自宅にお邪魔することとなりました。

案件は、心臓の冠動脈のカテーテル治療に伴って生じた事故に関するものです。

医療事件の中でも、内臓系、とりわけ、脳や心臓に関するものは非常に難易度が高く、専門医の頻繁な助言が欠かせません。

今回の相談の主目的は、証拠保全で入手したカテーテル治療の映像を観ながら、治療中に生じたトラブルの経過について分析してもらうことでした。

カテーテル治療中は、背中の側から放射線を照射しながら、造影剤を入れた冠動脈に挿入したカテーテルやワイヤーが病変に到達しているか、バルーン拡張、ステント治療が奏効しているかなどを確認し、ポイントポイントを映像として保存するというのが通常の手順ですのです、その映像をチェックしてみようというわけです。

正直、証拠保全で入手した映像を私たちが見ても、黒っぽい影がもぞもぞと行ったり来たりしているようにしか見えず、冠動脈のどの血管を写しているのか、どこに病変部位があるのか、医師が具体的にどのような手技を実施しているのかといったことを正確に理解することはできないわけです。

また、今回の相手方病院では、カテーテル治療の記録が経時的にきちんと記録されていないということもあって、協力医の方でも、あとで書かれたカルテの大雑把な記載を手掛かりにしつつ、映像画面を行きつ戻りつしながら分析してもらうという作業になりました。

結局、この日の3時間にも及ぶ検証により判明したのは、カテーテル治療中に、病変部位の近くからさらに枝分かれている別の血管に血栓が詰まってしまい、その血管が塞がれてしまったことと、それに気づいた施術担当の医師がその血管にワイヤーを通そうとして四苦八苦しているうちに、別の血栓が主要な血管を塞いでしまったということでした。

このような協力医の助言により、真相解明の第一段階として、カテーテル治療中に何が起きていたのかの事実経過を把握するという、相談の主目的については十分達成することができたのですが、相談が長時間に及んだにもかかわらず、嫌な顔一つされることなく熱心に対応いただいた協力医の方には本当に感謝しかありません。

事件の法的な検討についてはこれからが本番ですが、共同受任していた弁護士とともに、心地よい疲れを感じながら帰途につきました。

2016年11月06日 > トピックス, 医療事件日記

事件日記ードライブレコーダーは「交通事故の目撃者」

葵法律事務所

〇月✕日

交通事故においては、目撃者もいなくて被害者は病院に運ばれて意識不明で記憶が曖昧、そして加害者が真実を語っているか疑問なケースということはしばしば見られます。あるいは、車両同士の事故でどちらに落ち度があったか両者の言い分が食い違っているようなことも珍しくありません。タイヤのスリップ痕などの客観的な証拠から事故の真相、過失の程度を判断できれば問題ないのですが、そうした手がかりもなく、まさに「真実は藪の中」といった交通通事故の依頼を受けました。

こんなケースは証拠の優劣や責任を追及する原告の側が主張立証責任を果せたかどうかで判断が分かれてしまいます。訴訟とはそもそもそうしたものであることは、依頼者にも説明するのですが、真相は違うのに事故の発生状況に関する十分な証明ができないために思ったような結論に至らなかった場合、依頼者にとっては心情としてはなかなか納得できないことになってしまいます。

こんな場合に威力を発揮するのがドライブレコーダーです。記録された画像の威力は絶大であって、まさに百聞は一見に如かずなわけです。録画を再生することで事故状況は誰の目にも明らかになり、どちらにどのような過失があったかが明確となります。

依頼を受けた事故は車両同士の事故でしたが、裁判においてはドライブレコーダーの記録が決定打となりました。その事件ではたまたま依頼者が相手方車両(タクシー)にドライブレコーダーが付いていたことを記憶していたことから、被告側にその提出を求めたことで一気に解決に向かったわけです。提出された録画を再生してみたところ、相手方車両が無理に幅寄せしたために生じた事故であることがはっきりと写っていました。

 

このように、事故場面を遡って記録することができるドライブレコーダーは、新しい有力な証拠方法です。この機械を有効に利用することで無益な争いを訴訟などしないで未然に予防できるばかりか、速やかな被害者救済に資するわけです。その結果、無駄な紛争が減り、社会的に見てもコスト軽減にもなります。

こうした観点からすると、すべての車両にドライブレコーダーの装着を義務づけるべきように思います。最近ではドライブレコーダーの価格は相当安くなっていますから、実現はそれほど困難とは思われません。また、ドライブレコーダーにも様々な種類があり、多少値段は高いですが、車両の前後の状況を記録できるタイプのものを装着すれば正面からの事故だけでなく、追突された場合にも対応できます。すべての車両への装着はただちには無理だとしてもタクシー、トラックなどの営業車への義務付けは社会的合意を得やすいのではないかと思います。

プライバシーの問題も、ドライブレコーダーは、街中にある防犯カメラと比較しても視野が限られていますので、他者のプライバシーを侵害する危険性は非常に低いと考えられますので、プライバシー保護の観点からしても大きな問題はないように思います。

まあ、私たち弁護士にとっては、交通事故を巡るトラブルが減少することは経済的なダメージがあるともいえますが、かつて債務整理、利息制限法の問題などもそうであったように、制度を良くすることで解決できることはそうするに越したことはないわけです。

また、弁護士は、社会を良くするために、日々生じる新しい法的課題に取り組まなくてはならない、そういう存在なのだと言い聞かせて頑張るしかないのですから。

 

 

2016年11月10日 > トピックス, 事件日記

事件日記~交通事故の後遺症は「めまい」

葵法律事務所

交通事故の後遺症は実に多岐にわたりますが、ある交通事故で、自賠責の後遺症認定が下りました。

認定された後遺症は「めまい」です。

認定等級は、12級13号、「局部の頑固な神経症状」ということになります。

ちなみに、ここでいう「頑固」とは、頑固親父の頑固ではなく、「他覚的所見がある」、つまり、本人の「痛い」とか「痺れる」といった訴えだけではなく、検査の結果において第三者から見てもわかるような所見があるということを意味します。

どうも、こうした用語の中には、一般人の感覚からずれたものがあって紛らわしいですね。

今回の「めまい」については、「眼振」という検査があり、眼球の不随意運動という所見が確認されているわけで、こうした他覚的所見の有無が「頑固か否か」の決め手となっているわけです。

ただ、今回の依頼者の場合、このめまいは仕事の面にも非常に影響していて、めまいのせいで、現場での作業仕事、つまり、いわゆるガテン系の肉体労働を続けることができなくなり、現在は事務系の仕事に転職しています。

収入もかなり減っており、依頼者にとって、事故の影響は非常に大きなものになっています。

そこで、現在、12級よりもっと重い等級になるのではないかということを検討しているのですが、実は、めまいの場合、12級より重い等級として該当する可能性があるのは、9級ということになります。

11級や10級には該当する項目がないので、いきなり3段階重くなるわけです。

その差は、労働能力喪失率が14%から35%、後遺症慰謝料の標準額も290万円から690万円と跳ね上がります。

もちろん、この等級の上昇についてはその分当然ハードルも高いので、耳鼻咽喉科の専門医の助言をうかがった上で、異議申立が可能か否かを検討して行きたいと考えています。

2016年11月02日 > トピックス, 事件日記
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