事件日記~破産債権者集会
〇月✕日
申し立てた破産事件の債権者集会に行ってきました。
いわゆる少額管財事件という制度が出来てからは、会社や個人事業主以外でも、破産管財事件の扱いとなることが増えています。
破産管財事件では、破産管財人が選任され、その破産管財人による調査や、資産があればそれを換価するという手続が取られるわけで、破産管財人が就かないで早期に手続が終了する同時廃止事件と区別されますし、管財人の報酬のこともあって費用が少し余分にかかります。
また、破産管財事件では、通常、申立から数か月後を目途に債権者集会期日が設けられますので、その指定された期日に破産者と申立代理人が裁判所に出頭することになります。
債権者集会といっても、少額管財事件ではほとんどの場合債権者が集会に来ることはなく、裁判官、書記官、破産管財人、破産者、申立代理人のみで淡々と手続が進むことが多いのですが、今回は違っていました。
取引先の代表者の方が債権者集会に来たのです。
もちろん、債権者にとっては意見や質問を述べる機会ですし、当然といえば当然のことなのですが、破産管財人もちょっと驚いていました。
というのは、破産されることに不満や疑問を感じている債権者はもっと早い段階で破産管財人のところに連絡をして来ることが多いのですが、今回はそういったことがまったくなかったからです。
また、今回の破産者の方は、ずっと誠実に商売を続けて来られた方で、従業員、取引先からの信頼も厚かったので、代理人の立場からしても、「えっ?」というところはありました。
手続はスムーズに終わったので、それはそれでよかったのですが、手続終了後に取引先の方のお話をしてみると、やはり厳しい経営状況の中、必死でやっておられるわけだし、またいろんな葛藤を抱えておられるのだということを実感しました。
破産者の方もそうですが、中小零細企業や、そこの従業員の人たちは、真面目に頑張っておられるのに、大企業ばかりが潤って、こうした中小企業にしわ寄せが来る今の日本社会のあり方って、どうなのだろうかとやりきれない気持ちになりますし、弁護士としてもっと何かしてあげられなかっただろうかという無力感も覚えます。
せめて、こうやって関わった方が前向きに再出発ができるよう、少しでも力になれればと思うばかりです。
事件日記~個人再生手続のこと
葵法律事務所の弁護士の日々の活動の中から、裁判、交渉、その他日々の業務の中で起きた出来事について、得たこと、感じたことを綴る不定期掲載の日記です。
多少は愚痴めいたお話も出て来るかもしれませんが、できる限りポジティブに取り上げて行きたいと思っています。
もちろん、記事を書くにあたっては、何よりも依頼者の方の利益、プライバシーに対する配慮を怠ることはできませんので、どうしても抽象的な表現となることはご了解ください。
〇月✕日
ここのところ、なぜか個人再生事件を立て続けに受任しました。
個人再生とは、民事再生手続の特則として設けられた制度で、特に住宅ローン付きの不動産を持っておられる多重債務者の方の場合、住宅ローン以外の債務を圧縮して3年もしくは5年で分割返済をするという再生計画を裁判所に認可してもらえれば、その計画にしたがった返済をすればよいというものです。
この個人再生という手続はなかなかよく出来ていると思うのですが、それは破産するよりもそれぞれの当事者にとってメリットをもたらすからです。
つまり、まず、住宅ローンの金融機関にとっては従前どおり住宅ローンが支払われるということで、破産となり、不動産が処分されてしまうよりも債権回収という意味でメリットがありますし、その他の債権者にとっても、破産であれば債権がまったく回収できなくなるのに対し、何分の1でも回収できることになるわけです。
また、申立をする依頼者にとっては、破産であれば住み慣れた不動産を手放さなければならなくなりますが、個人再生ならば不動産を持ち続けることができます。
もちろん、住宅ローンは払い続けなければいけませんが、不動産を手放した場合は借家で賃料を払うことになるわけですから、それとの比較で見ても大きなメリットがあるといえます。
しかし、この個人再生にも、当然のことながらそれを認めてもらうための要件がありますし、仮にその要件をクリアできるとしても、経済的にほとんどメリットがない場合もあります。
ですので、弁護士としては、相談段階で、まず申立の要件をクリアしているかを検討しなくてはなりませんし、それに加えて、依頼者の資産状況等を確認して、個人再生の申立をするメリットがあるか否かを検討してあげなくてはなりません。
今回受任した個人再生事件の中に、申立の要件のハードルが非常に高いものがありました。
それゆえ、申立までに調査、検討に相当な時日を擁しましたし、金融機関との調整も必要となりました。
申立後も、裁判所から追加で調査と回答を求められてしまい、相当四苦八苦しましたが、このたびやっと手続の開始決定が出ました。
ここまで来れば、再生計画の認可までもう一息ですが、家族が集う「家」を守ってあげるためにもうひと踏ん張りしなくてはと決意を新たにしています。
医療事件日記
葵法律事務所の弁護士は、いつも誰かが医療事件に携わっており、日々様々な課題に取り組んでいます。
そこで、日々の活動の中で、医療事件に関連する出来事を日記風に取り上げて綴ってみたいと思います
もちろん、依頼者の利益を損ねてはいけないので、その点の了解を得ておくことが最優先となりますし、それでも記事の内容については慎重を期さなくてはいけません。
それゆえ、書いている内容が抽象的であったりしますが、そうした理由ですのでご理解のほどよろしくお願いします。
〇月✕日
ある死亡事故に関する訴訟で、裁判所に行きました。
すでに「弁論準備」という手続に入っています。
弁論準備とは、法廷ではなく、ラウンドテーブルでの平場の議論のやりとりで主張や証拠を確認する手続なのですが、医療訴訟は、わりと早い段階から、弁論準備に移ることが少なくありません。
医療事件の場合、最初から込み入った議論になることも多いですし、証拠資料の確認も膨大であったりしますので、法廷のやりとりではどうしても限界があるからです。
事件は窒息による死亡事故に関するものですが、今回は、主に事実関係に関する被告の主張に対する認否、反論の書面をこちら側が提出しています。
ただ、この事件を担当する裁判官は、どちらかといえばせっかちなタイプであり、事前に提出した書面はしっかり読み込んでもらえていると思うのですが、その分、双方に対する次回期日までの宿題の出し方が非常にタイトで、準備する側としてはかなりしんどくなります。
それでも、早期に事案のポイントを裁判所に理解してもらい、こちらの争点の捉え方に納得してもらうことはとても重要ですので、かなり気合を入れて書面を仕上げて臨みました。
やりとりの中で、裁判官が、「この流れでみると、被告が主張するような経過は辿らないのではないか」と感想を述べてくれていたのを見て、テーブルの下で小さくガッツポーズをしました。
次回は相手方の反論の予定ですが、こちらからも、主張の裏付けとなる医学文献を用意しなくてはなりません。
期日は2か月後、戦いは続きます。
医療事件のお話 第1回
このページでは、医療事件あるいは医療自体にまつわるいろんなことを取り上げたいと思っています。
興味のある方はどうぞお読みください。
第1回 「医療事件~その奥深さについて」
最近、インターネットを見ていると、やたら「医療事件を扱います」という法律事務所の宣伝が目につきます。
私たちも、まあ、どちらかといえば、一般的な法律事務所より数多く医療事件を扱っている方だと思うのですが、正直、自信満々に、「医療事件なら何でもお任せあれ!」という風に胸を張るのはちょっとおこがましいかなと思ったりします。
やはり、医療の領域は、幅広く奥が深いわけで、医療の専門教育も受けておらず、また臨床現場のこともよくわからない弁護士にとってそう容易に扱える領域ではないからです。
相談を受けてからも、医学文献や判例を調べただけでは、見通しがつけられないばかりか、何が争点かすらわからない案件だって決して少なくありません。
ですので、文献や判例等を調べたり、懇意な医療者に相談する等して、当該事件に関連するであろう医学的知識を収集し、そこから、なぜ事故が起きたのか仮説を立てつつ、協力してくれる専門医のところに押しかけるわけですが、私たちが立てた仮説がまったく的外れだなんてことも珍しくないのです。
実際、最近扱ったある医療事件では、私たちが立てた仮説を協力医に尋ねると一笑に付されたのですが、その事件の場合、そこからの協力医とのディスカッションの中で、別の仮説を示唆してもらい、記録を読み直してその仮説を裏付ける記載や検査データが見つかったということもありました。
ことほど左様に、医療事件は、やってもやっても底が見えない、そんな事件領域です。
だから面白い(というと語弊がありますが)というか、興味が尽きないともいえるのですが。
最近も、友人の弁護士から、セカンドオピニオンということで、ある採血事故の相談を受けました、
採血で針を奥深く刺した結果、神経損傷が残ったというものですが、厳密には、どの血管を刺し、どの神経を損傷したかということと、実際に生じた症状と損傷した神経の支配領域とが一致するか、その後に残った後遺症は医学的にどう評価されるか(友人の扱っている症例はカウザルギー「CRPSのType2」と言われるものでしたが)、採血によって生じたと評価できるかといったことを詰めて行かないといけないわけで、そうした医学的機序を理解して行くことで真相に近づいて行けるわけです。
さらに訴訟になると、予期せぬ主張が医療側から出て来ることもしばしばで、裁判の展開の中で、医学的な再検討や方針変更を迫られることもまたよく見られることであり、こうした方針変更は通常の民事事件ではあまりないことです。
こうした試行錯誤を重ねながら医療事件に取り組んでいる毎日なのです。
ですので、ネット上などで、「医療事件ならお任せ下さい」的な宣伝を目にすると、「本当に?」という疑問が湧いて来ることもあったりしますが、まあ、他所の事務所のことはともかく、私たちにとって、扱っても扱っても悩みの尽きない事件領域、それが医療過誤事件なのです。
葵法律事務所ホームページ開設のご挨拶
私たちは、このたび葵法律事務所の設立に伴い、当ホームページを開設いたしました。
これからは、日常の業務、活動に加えて、当ホームページを通じても、少しでも皆様のお役に立てるような情報発信をしてまいりたいと考えております。
できるだけ、頻繁に更新を重ね、充実したホームページとして行こうと考えておりますので、ご利用のほど、どうかよろしくお願い申し上げます。
葵法律事務所所員一同