医療事件日記~依頼者と協力医のこと
私たちが医療事件を扱って行くうえで協力医の存在は不可欠ですが、最近当事務所で扱っている医療事件において協力医との関係でとても嬉しく思ったことが続けてありましたので、ちょっとご報告します。
通常、協力医にお願いすることは、事案の資料を一緒に検証してもらうなどして、事故がどのような機序で起きたかであるとか、当該医療行為における注意義務違反の有無、結果回避可能性等についてディスカッションの時間を取っていただき、助言をしてもらうといったことになります。
ただ、事件によっては、協力医の方にお願いして、依頼者を直接診察していただく場合もあるのですが、それは、たとえば、ご本人が訴えている症状の原因やそこに至る機序を正確に把握しておく必要があるからです。
また、過失や因果関係を検討する上でも、協力医の方に患者を診ていただくことは非常に有用な場合があります。
もちろん、交通事故などでもあることですが、病状がなかなか改善せず、依頼者の側から協力医の紹介を頼まれることもあります。
そのような経緯で、事案によっては、依頼者に協力医がおられる病院を紹介して診察を受けてもらうということが時折あるのですが、それが良い結果につながるということが立て続けにありました。
一件は、手術ミスで動脈を損傷し、さらに術後の対応の遅れも重なって筋肉や神経が広範囲にわたって壊死したという事故で、その後の回復が捗々しくなかったため、今後の医療方針を検討してもらいたいという要望もあって、信頼できる外科医をご紹介したところ、その結果が非常に満足のいくものだったことから、最高の医師に出会うことができたということで、治療にあたってくださった外科医だけでなく、私たち弁護士にもお礼を述べてくださったのです。
もう一件は、ある医療ミスのせいで首から肩、背中、さらには腕にも強い痛みや痺れが出て、日常生活もままならなくなったということで、そこに至った機序を検討する中で、ペインクリニックの協力医の方をご紹介したところ、初回の診療の際の処置で症状がかなり楽になったということで、以後も通院を継続しておられますが、もしかしたら後遺症が残らず、治癒が見込めるかもしれないというところまで来たのです。
現在のところ、その方の症状はまだ完治までは行っていませんが、日常生活における苦痛はかなり軽減してきており、こちらのケースでも、依頼者の方からは、紹介した医師に対してだけでなく、私たち弁護士までお礼を言われ、なんだか面映ゆい気持ちになりました。
依頼者にとって、弁護士への依頼の目的はあくまで事件の解決であることはいうまでもありませんが、協力医の方との出会いが依頼者にとって救いになることがあるということは、ある意味、弁護士冥利に尽きると感じるところでもあります。
医療事件日記~接骨院と保険
医療事件を多く扱っておりますと、関連領域での事故についても相談を受けたり、事件受任となったりすることがあります。
たとえば、老人ホームなどの福祉施設における介護事故や接骨院における施術事故といった事件です。
いずれも、真相の解明、責任の追及のためには医学的な評価が必要な領域なことがあり、医療過誤と共通する点が多くあります。
このうち、接骨院における施術事故について、事故の内容自体のことではありませんが、意外と重要というか、見過ごせないと感じたことがありますので取り上げてみます。
医療機関における医療事故の場合、医療側が損害保険に加入していないということは、これまで経験した中では一度もありません。
顧問弁護士がいない比較的小規模の医療機関であっても、交渉段階から弁護士が出て来ることが通常ですが、実質的には保険会社側の弁護士だったりします。
医師会や保険会社からの紹介ということが多いようですが、いずれにしても損害保険で対応してもらうことになりますので、実際の解決においては、保険金を支払う保険会社の了解を得ながら進めて行く感じになります。
一方、接骨院における施術事故の場合、接骨院自体は医療機関ではないため、医療過誤保険で対応するわけではありません。
もっとも、以前に扱った事件で経験しましたが、それに類する損害保険は存在しています。
ある接骨院の事故で、その接骨院は警備保障系の会社の損害保険に加入していたのですが、実際にやりとりをしてみると、医療過誤保険の場合と同レベルの賠償がなされましたし、対応も非常にスムーズでした。
ところが、最近立て続けに相談を受けた複数の接骨院での施術事故においては、いずれの事故でも接骨院は損害保険に加入していませんでした。
保険でカバーされないことが影響してか、いずれの事故でも、接骨院側が被害者に対して非常にシビアな対応をしてきており、そのため、被害者の方が困って相談に来られたわけです。
個々の事件の解決のことはともかく、損害保険加入の要否についていえば、接骨院における施術はカイロプラクティックのような体に物理的負荷をかける類の施術では重篤な後遺症が残ることもあり得ますし、整形外科医ではなく、医療機関でやるような検査がスムーズにできないといった制約もあって、対応の遅れで重大事故につながることもあり得るわけですから、損害保険に加入しておいてもらわないと、利用者の側からすると、安心して施術を受けられないという問題があります。
また、実際に接骨院を利用する側にしてみると、当該接骨院が損害保険に入っているか否かは一見して明らかではありませんので、事故に遭ってから、「実は保険に入っていません。お金はありません」となることだってあり得るわけで、今相談を受けている事案はそんな展開だったわけです。
自転車事故で数千万円の高額賠償となった例もあるように、自転車を乗る人ですら、いざという場合に備えて損害保険に加入するのが当たり前になりつつありますし、車の任意保険は、「任意」といいながら、万一事故が起きた場合のことを考えれば、「義務」だと言っても過言ではありません。
同じように、接骨院の施術でも時に重大な損害が生じるリスクがある以上、損害保険に加入すべきですが、利用者としても、接骨院を利用するにあたっては、かかろうとしている接骨院が損害保険に加入しているかどうかを事前に確認しておくことが大切なのではないか思った次第です。
日々雑感~大谷翔平選手の発言の意義を考える
立て続けに野球絡みの話題を取り上げます。
興味があればお読みください。
この3月はWBCの話題で持ちきりでした。
ヌートバー選手、佐々木朗希選手、ダルビッシュ選手など、多くの選手の発言や情報などが連日報道されていましたが、ダントツで多く報道され、注目されたのは、なんといっても大谷翔平選手(以下、敬愛の気持ちを込めて「大谷」と呼びます)の一挙手一投足でした。
100マイル以上の剛速球を投げ、バカでかいホームランをかっ飛ばす大谷が、野球界のスーパースターであり、ユニコーンあるいは宇宙人とまで称されるのは、当然と言えば当然ですし、野球漫画の主人公としても、あまりにベタ過ぎてあり得ず、長く漫画を読み漁り、野球も大好きな私の中でも、彼に匹敵する野球漫画の主人公といえば、「スポーツマン金太郎」(古すぎてすみません。でもスカッとするのです)くらいしか思い浮かばないわけです。
しかも、WBCの決勝戦の最後の場面が、チームの同僚で、公式戦ではあたることのない、MVP3回のアメリカのスーパースターのマイク・トラウトで、極めつけはフルカウントから三振を奪ってゲームセットなんて、あまりにできすぎのエンディングを迎えるわけですから、まさに大谷による大谷のための大会だと言っても過言ではなかったでしょう。
ただ、個人的には、彼のアスリートとしての能力の高さやストイックさ以上に、その振る舞い、発言に感動しました。
特に、私が本当に素晴らしいことだと思った発言があります。
それは、「日本だけでなく、韓国や中国、台湾など、アジアの子供たちがもっと野球を好きになってくれるといい」という趣旨の発言です。
この発言自体、称賛されるべき発言だと思うのですが、さらにすごいなと思ったのは、この発言が、インタビュアーのある問いかけに対するものだったことです。
私が知る限り、彼は決勝戦の場以外でも同趣旨の発言をしていますが、いずれも似たようなインタビュアーの問いかけに答えたものでした。
そのインタビュアーの問いかけとは、「日本の子供たちに野球が広まるか」とか「日本の野球が世界で注目されるのでは」といった、いずれも日本に絡めたものでした。
それに対して、大谷は、2回とも、「日本もそうですが」「日本だけじゃなく」と断って前述の発言をしているのです。
つまり、彼は、インタビュアーの意図とは異なる回答をしているわけです。
特に、2回目の問いかけは、優勝後のインタビューに対するものでしたが、リアルタイムで見ていたら、彼は間を置くことなく、即、「韓国、台湾、中国も、その他の国も」と答えています。
ちょっと穿った見方かもしれませんが、彼は、海外で一人のアスリートとして活躍する中で、日本とかでなく、もっとワールドワイドなものの見方をするようになっており、それゆえ、何でもかんでも日本に結び付けるような、ややもすればナショナリズム高揚的な日本のマスコミのインタビューや報道のされ方にうんざりしているのではという気さえしました。
また、これから、野球というスポーツが発展して行くためには、日本国内だけではだめなわけで、アジアやヨーロッパなどにその面白さが伝わっていく必要があり、彼自身、そうした考えを強く持っていて、使命感のようなものがあるようにも感じました。
この大谷の発言から、WBCにおけるイチローのかつての発言が注目されたりしています。
それは、韓国に負けた時に、イチローが、「これまでの人生で最も屈辱的なことだ」と述べ、さらには、「今後30年はかなわないと思わせるようにしたい」と、韓国を侮蔑するような発言をしたことです。
イチローのアスリートとしてのストイックさ、能力の高さは、誰もが認めることですし、素晴らしいとも思うのですが、大谷とは明らかに真逆な、偏狭なナショナリズムを剥き出しにしたもので、当然ながら、韓国の人たちから強く反発を受けましたし、私も当時、この発言を聞いて非常に嫌な気持ちになりました。
もちろん、戦う中で自身やチームメートを鼓舞する意図だったのかもしれませんし、後者は百歩譲ってそうした趣旨とも取れなくはないですが、それにしても、韓国に負けたことを「最も屈辱的だった」などとディスる必要はないわけで、こちらの発言は非難されても仕方のないことだと思うのです。
鼓舞の仕方という点でも、今回、大谷は、アメリカと戦う前に、円陣を組んで、「今日だけは、あこがれを捨てよう」と選手たちに呼びかけていますが、この発言は、相手に対する敬意を持っていることが前提となっていますから、戦う相手を敬う気持ちを忘れない大谷の謙虚さがよく表れている、非常に深い発言だなと思いました(実際、この発言はアメリカでも非常に好意的に受け止められているようです)。
ちょっと話は逸れますが、世界から戦争をなくすためには、ナショナリズムに囚われ過ぎないことが何より肝要だというのが私の考えで、自身の国籍に囚われることなく、他国の人に敬意を示すことができる人が増え、また、他国の人に対するヘイトを口にすることが恥ずかしいことだと多くの人がそう感じるような社会にしなくてはならないと思うのです。
大谷の発言にはいろんな意味で発見があるわけで、そんなことを思わせてもくれます。
人は、何歳になっても、他者の発言、振る舞いから多くを学ぶことができます。
彼は20代の若者ではありますが、早くから日本を飛び出て、大リーグに行き、ベーブルース以来といわれる投打の二刀流に挑み、注目を浴びて成功をおさめる中で、アスリートとしてだけでなく、人間的にも成長を重ねた人なのだと思います。
思えば、あのビートルズが、反戦や平和、男女平等などのメッセージを発信するようになったのは、彼らがまだ20代のころでした。
感性の豊かさがあれば、年齢は関係ないのだなとつくづく感じるところです。
ともあれ、これからも、メジャーでの大谷の活躍を応援しつつ、その中での彼の発言、振る舞いにも注目して行きたいと思います。
日々雑感~広島カープ再生への道Part3
続いて投手陣を含めた守備の問題を取り上げます。
今の野球は、投手分業制が採られています。
どこのチームでも、先発、中継ぎ、抑えで投手の適性を見極めながら、選手起用をしています。
そのこと自体に異論があるわけではありませんが、その部分の戦術についても、改善すべき点が多々あります。
まず、先発ローテーションですが、固定観念に囚われすぎない、柔軟な発想が必要と思います。
各球団のチーム事情によるところもあるので、すべてのチームに当てはまるわけではありませんが、カープについていえば、良くも悪くも先発陣と中継ぎ、抑えの間に大きな力量の差はないと思います。
もちろん、去年に関していえば、床田、森下あたりは頭一つ抜けている印象はありますが、大瀬良、九里、玉村、遠藤あたりについていえば、中継ぎ、抑えの投手と比べて、さほど安定感で優っているという印象はありませんでした。
少なくとも、去年活躍したメンバーでいえば、たとえば、矢崎あたりは、経験を積み重ねてきたので、中6日で登板すれば、毎回とはいかなくても、ある程度、クオリティスタートできる力量があるように思いますし、栗林はより高い確率でその力はあるでしょう。
また、ちょっときっかけをつかめば、コルニエルにも先発の一角を占める力はあるし、さらに新人でも河野、益田あたりは先発陣に食い込めるかもしれません。
何が言いたいかといえば、役目を固定しすぎるのではなく、より多くの投手に先発の経験を積ませ、相手との相性なども見ながら、一軍での先発の機会を与えてあげることが競争意識を煽り、投手力の底上げにつながると思うのです。
実際、昨シーズンの後半の息切れは、先発を6人くらいで回すことに拘り過ぎて、疲弊させてしまったことがかなり影響していると思います(野村に関しては、明らかに先発の役目が果たせないほど力が衰えているのに、一軍に上げると、必ず先発させていましたが、それこそファンからすると、記録のための「忖度」にしか見えないくらいでした)。
実際、三連覇中においても、先発ローテに穴が開いたときに当時中継ぎだった薮田を先発に抜擢したところ、好投してローテーションに入り、その後大活躍したということもあります。
また、先発とリリーフの配置転換を柔軟に行うことは、選手寿命を延ばすことにもつながります。
日々のリリーフ陣の起用方法についても、一定の戦術と配慮が必要です。
ここのところのカープを見ていると、中継ぎの起用法も非常に硬直していたと感じます。
たとえば、1イニングだけ投げさせ、回跨ぎをさせないという起用法ですが、たとえ1イニングでも登板に備えて肩を作らなければならないので、それでもって連投となれば、投球回数以上に疲れが溜まることになります。
また、投手を1イニングで替えるという起用法だと、全員が好調とは限らず、起用された誰かが打たれてしまうというリスクも高くなります。
選手の力量に応じてということではありますが、ブルーウエーブが日本シリーズで取り入れていたように、一人の投手に2イニング、3イニングを投げさせるという戦術をもっと柔軟に取り入れるべきと思います。
その代わりに、複数イニング投げさせた投手は、翌日、ベンチ外とするといったメリハリで疲労を蓄積させないようにすればよいのです。
好投していた投手が、連投を重ねるうちに、打ち込まれるようになり、信頼を失って2軍に落とされるというシーンを何度も見ましたが、中継ぎの起用法が柔軟性に欠けていたことが影響していた面もあると思います。
ほかにも勝ちパターンといっても、順序やバリエーションは相手に合わせてもっと柔軟にすることが必要と思います。
たとえば、7回あたりから誰をどう起用していくかですが、下位打線なのか、クリーンアップなのかによって起用を逆にすることもあり得るし、相手チームの打線の強弱もありますから、このあたりも柔軟さが必要でしょう。
もう一つ、これは目先の勝ち負けということではなく、長い目で見て、選手を活かすという意味で、リリーフ投手については、毎年50試合以上起用し続けるということはやめるべきで、新井さんには、ぜひ、このあたりの方針をしっかり考えてもらいたいと思います。
以前、ブログをやっていた時にも書いたことがあるのですが、リリーフ投手が酷使され続けて、選手生命が断たれてしまっているのは、決して珍しくないプロ野球の黒歴史といってもいいでしょう。
監督は1年1年が勝負で良い結果を残したいし、選手としてもアピールしたいということもあるので、どうしても無理をしてしまい、故障して選手生命を縮めてしまいます。
才能ある選手が、将来を絶たれないようにすることは使う側の責任でもあります。
また、個人的には、リリーフでフル起用するのは、2年もしくは3年が限界と思っています。
ですので、栗林あたりもそろそろ先発転向を考えるべきだし、矢崎、森浦、ケムナ、塹江あたりもしかりです。
そうした積極的な配置転換で選手寿命を延ばしてあげることが、戦力の向上につながることは間違いないと思います。
投手の起用法については、ほかにもいろいろアイデアがありますが、長くなるので、今度は捕手の話をします。
カープは、正捕手候補がわんさかいますが、多すぎて起用が中途半端になっているように思います。
強いチームには良い正捕手がいます。
では、良い正捕手の条件とは何かですが、打撃ではありません。
肩でもありませんし、キャッチングでもありません。
重要なのはなんといってもインサイドワークです。
捕手は、一人だけ逆方向を向いて現場での指揮をする立場にいます。
相手チームの戦術や打者の狙いを読み、サインを出して、守備位置を変えさせたり、打者の読みを外し、あるいは投手と打者の力関係を見抜くなどして、配球に工夫を凝らし、相手に無駄な得点を与えないように具体的な戦術を実行する現場監督です。
肩がいいに越したことはないし、打てればなおいいですが、それは二の次です。
今のセリーグを見ても、投手がいいとされるチームには、良い捕手がいます。
スワローズ、タイガース、そしてドラゴンズには良い正捕手がいます。
特に、圧倒的な投手力とまでいえないスワローズが連覇できたのは、なんといっても中村悠平の正捕手定着が大きいといえます。
一方、カープ、ジャイアンツ、ベイスターズには、現状、正捕手といえるような選手はいません。
つまり、投手力がいいとされるチームには、良い正捕手がいるのですが、セリーグの現状を比較すればわかるとおり、それは決して偶然ではありません。
なので、新井さんには、良い捕手の資質を持っている選手を辛抱強く起用して、投手から信頼される正捕手を辛抱強く育成してもらいたいと思います。
それがカープの黄金時代の再来につながると確信しています。
もちろん、新井さんが捕手に専念させると宣言した坂倉には期待していますが、ともすれば、彼の打撃を活かすことが優先で、捕手としての適性がどうかの見極めがなされたうえでの判断ではないのではという気がしてなりません。
打撃については打てるに越したことはありませんが、何よりも捕手としての適性を備えるのが誰なのか、可能性のある原石を見極め、チャンスを与えてもらいたいと思います。
もし、坂倉よりもインサイドワークの優れた捕手がいるなら、その選手を辛抱強く起用し、坂倉をコンバートするという選択も視野に入れるべきです。
実際、カープの誇るあの偉大な衣笠だって、元は捕手でしたが、カープを赤ヘル軍団に生まれ変わらせたルーツ監督の説得で、三塁にコンバートされてその思い切りのいい打撃が花開いて球史に残る選手になったのです。
また、捕手は経験の必要なポジションといわれますが、経験が浅くても、捕手としての適性がある選手なら、目を瞑って正捕手に起用するべきです。
インサイドワークに優れた正捕手さえ育成できれば、しかもその選手が若ければ、向こう10年は安泰で常に優勝争いに食い込めることも可能だからです。
たとえば、マリーンズは、10代の松川を積極的に起用していますが、いずれマリーンズが黄金時代を迎えるに違いありません。
とまあ、いろいろ書きましたが、いよいよペナントレースがスタートします。
ファンにとっては一喜一憂する日々の始まりですが、日々の勝敗に拘りつつも、長い目で応援して行きましょう。
今度はベイスターズについて書きたいと思いますが、何処かで野球論を語らせてくれないかなあ・・・。
日々雑感~広島カープ再生への道Part2
Part1に続いて、いよいよ、如何にしてカープを強くするか、まずは、攻撃陣の問題から取り上げます。
機動力の問題など個別に検討すべき点はありますが、ここのところのカープに決定的に欠けていたのは、チーム内の公平で健全な競争です(それは投手陣についてもいえることではありますが)。
実績のあるベテランが結果を残せないでいるのに、そのままベテランを使い続け、スタメン起用をしなくなってもそのまま一軍ベンチにいさせ続けるという、政治の世界も含め、今の日本を停滞させている「忖度」が、カープの中でもあるのではと疑いたくなるような采配、選手起用が、ここのところずっと続いていました。
いかに三連覇に貢献した選手であっても、結果が著しく悪ければ二軍に落とし、若手にチャンスを与えることがチームの活性化につながるのに、それが十分なされていたとはいえない状況でした。
古い話で恐縮ですが、1975年に初優勝したカープのその後をちょっと振り返ります。
初優勝した後、カープはなかなか優勝できず、順位もじわじわ転落して行きます。
その中で、古葉監督は、徐々に戦力を立て直して二連覇を成し遂げるのですが、高橋慶彦や山崎隆造、正田耕三といったスイッチヒッターを辛抱強く起用し、機動力野球と200発打線の融合の完成形ともいえる、見ていてわくわくするチームを作り上げ、赤ヘルカープの第一期黄金時代を築き上げました。
今も破られていない連続試合安打のプロ野球記録を持つ高橋慶彦の真骨頂は、なんといっても失敗を恐れず盗塁に果敢にチャレンジし続ける姿勢で、多い時は年間70個以上の盗塁を記録していましたが、山崎も正田も走れるスイッチヒッターで、相手チームにとっては脅威でしたし、正田は二年連続首位打者にも輝いています。
しかし、ローマは一日にして成らずで、可能性のある選手については、目を瞑って起用し続ける辛抱強さが求められるのですが、古葉監督の起用法はまさにそんな感じでした。
シビアに言えば、ベテランと若手が同じ程度、あるいは若干若手のほうが力量が劣っても、伸びる可能性に賭けて機会を与えることが必要であり、それをやってこそ「育成」といえるわけです。
資金力が乏しい球団は、どこかの球団みたいに選手を取っ換え引っ換えしたりできないのですから、若手に機会を与え、結果が出ず、批判を浴びても粘り強く使い続ける根気を持つことが戦術として必須なのです。
もちろん、ベテランにもチャンスは与えるべきですが、伸びしろは少なく、一方で「慣れ」という優位さがあるわけですから、それを活かせず、結果が出せないのであれば、若手に居場所を譲らなくてはならない立場にあります。
もっとも、個々の選手からすれば、結果が出なくても、自ら二軍に落としてくれというはずはありません。
そこをシビアに判断し、決断を下すのが首脳陣の仕事なのです。
三連覇を共に経験したベテランに毅然と接するということは、新井さんにとってはしんどいところかもしれませんが、指揮官としての能力、姿勢が問われる試金石になると思います。
もう一つ、二軍から上げた選手には、その都度、何度かチャンスを与えるということを方針として確立し、徹底すべきです。
去年までのカープの選手起用を見ていると、一軍に上がった選手が一度も起用されないまま二軍に落とされるということがしばしばありましたし、試合で結果を出したのに、その後起用されず、そのうち二軍に落とされるということもありました。
もちろん、現場で練習などを見ていて使えないと判断されることもあるのかもしれませんが、その選手が腐ってしまうだけでなく、他の選手の士気にも大きく影響します。
やはり、選手にとっては、がんばったら一軍に上げてもらえる、一軍に上げてもらえたら何度かはチャンスを与えてもらえる、結果を残せば続けて起用してもらえるということが何より励みになるわけです。
チームを如何にして活性化させるかについては、ほかにもいろいろな手法が考えられますが、ベテラン、若手を問わず、できるだけ平等に競争の機会を与えることが、カープのような資金力の乏しい球団にとっては重要な戦略といえます。
その中から新しい戦力が出てきてチーム内競争が激しくなることこそがチームを強くするための最良のレシピなのです。
もう一つ、攻撃陣の問題点として挙げられるのは、得点力の低さです。
打率が高いのに、得点が少ないのは、長打力不足ということもありますが、それは一面であり、本質的な問題点はほかにあります。
ここのところの得点力の低さは、厳しい言い方をすると野球の質の低さによるものです。
野球というスポーツは、投手と打者の一対一の戦いという部分が大きいのですが、それに関して言えば、普通にやれば70%以上投手が勝ちます。
ましてやエース級を相手にすれば、あるいは、去年の日本シリーズでも明らかなとおり、勝負所で160キロ近いスピードの直球と落差の激しいフォークを投げ分ける投手が出てきたら、90%以上投手の勝ちとなります。
そこで勝つために知恵を絞り、戦術を駆使するのが首脳陣の仕事なのですが、ここのところのカープは、残念ながらその戦術を練り上げて実践するということができていませんでした。
その結果、相手チームのバッテリーは、概ね一対一の打者との戦いに専念でき、優位に立っていました。
よくいやらしい野球といいますが、古葉監督時代の強い時のカープは、何をやってくるかわからないと相手にそう思わせる野球でした。
それは、たとえば、ヒットエンドランや盗塁だけではなく、バスター、ドラッグバント、あるいは走る構えを見せるだけでも違います。
もちろん、徹底した右打ちもそうだし、ただ打つだけのときは徹底して右打ちを試みながら、ヒットエンドランになったら、三遊間を狙うといった戦法もあります。
要は、打者が打席に立った時の、攻める側の引き出しの多さが重要なのです(引き出しが多ければ、相手が警戒して四球を得ることもできますし、球数を多く投げさせれば打ちあぐんでいるエース級の投手をマウンドから引きずり下ろすこともできます)。
戦術として大切なことは、個々の選手の走塁の技術や走る意識づけだけではなく、それを戦術に如何にして組み込むかということです。
参謀となる藤井ヘッドコーチや石原コーチは捕手出身ですから、捕手の目から見て、どう攻められたら嫌かという視点でもってそれを攻撃に関する戦術に生かして練り上げ、新井型攻撃野球を構築していってもらいたいと思います。
失敗を恐れず、アグレッシブで、相手から見て何をやってくるかわからない、そんなワクワクドキドキな新生赤ヘル野球を期待しています。
もちろん、ホームランは野球の華ですし、新井さんなので、そこも期待したいところですが、それは選手の成長にかかるので、ファンとしても、一足飛びではなく、長い目で見ることが肝要と思います。
ほかにも打順の組み方や、會澤あたりを一塁、三塁あたりで起用するなどの積極的なコンバートとか試みるべきことはいくらでもありますが、ひとまず、攻撃陣についてはこれで締めます。
次は守備の問題を取り上げますが、長くなったのでPart3に続きます。